第4章 これは同情で愛情ではない

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少しばかり気合いを入れ、三橋さんが自宅の作業用に与えてくれた部屋にこもった。 『可愛い鹿乃子さんはいますかー?』 不意に三橋さんの声が聞こえてきて、びくりと手が止まる。 「はい、いますよ」 こきこきと凝り固まった肩をほぐしながら、目の前に置いてあるスピーカーに表示されている時間を確認した。 昼前に作業をはじめたはずだが、すでに三時を過ぎている。 『思いのほか早く用事が終わったので、いまから新幹線に乗れそうです。 お土産、なにが欲しいですか』 急ぐ必要なんかないのに、半ば走るように駅に向かっている三橋さんが容易に想像できた。 「フルーツサンド! というか、あそこの食パンが美味しいので、食パンが欲しいです」 『わかりました。 新幹線に乗ったら、正確な着く時間をお知らせしますね』 「気をつけて帰ってきてくださいね」 話を終え、キリのいいところまでやって今日の作業は終えた。 最大早くて着くのは二時間半後だから、あと二時間は余裕がある。 買いものをして晩ごはんの準備までできそうだ。 「なんにしよーかなー」
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