第4章 これは同情で愛情ではない

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今日はひとりの予定だったから、簡単にパスタにしようと思っていたんだよね。 それにスープ仕込んで、ナス買ってきて冷凍庫にあるはずの豚バラとチーズ蒸しにしたらいいかな? 明日の朝ごはんの材料も買いたいし、さっさと買いもの行ってしまおう! スーパーで買いものを済ませて帰り、手早く下ごしらえをして家を出る。 「……」 今日も駅で、改札の向こうを睨む。 『いつも停める駐車場はわかっているし、車で待っていていいんですよ?』 とは言われたが、いつのまにか楽しみになっていた。 「鹿乃子さん!」 遠くから私を見つけた三橋さんの顔が、ぱっと輝く。 「ただいま!」 できる限り急いで来た彼が、私に抱きつく。 ……と、いうか、正確には抱き上げる。 当然、周りの目を集めるが、最近はさほど気にならなくなった。 「おかえりなさい」 「はい、ただいま」 にこにこと本当に嬉しそうに笑いながら、ようやく彼は私を降ろした。 この顔が早く見たいがばかりに、改札の前でいつも待っている。
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