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「そんなもん当たるわけねえだろ」
あきれたように矢次がわめいた。
「なんだよ。宇宙人に願ったら叶うんじゃなかったのかよ」
騙されたと知り、文男は振り返る。
暗闇の中、矢次は笑っているように見えた。
「宝くじじゃなくて、ほかに願い事あるだろ」
矢次の言うとおりだった。ほんとうは文男にとって宝くじはどうでもよかった。文男の願いはただひとつ。
「なっちゃんだよ。宝くじなんてどうでもいい。俺は、なっちゃんのことが好きなんだ。つきあってほしい。それが俺の願いだ」
暗闇の中だから言えた、文男のほんとうの願いだった。
とそのとき、しんとした広場に軽快なメロディが鳴り響いた。
文男の尻ポケットに入れたスマホが着信を報せ、震えているのだ。山の中だというのに電波が届いていた。
抜き出したスマホは暗闇の中で存在を示すように輝いている。
文男は目を瞬かせながら相手を確認する。
次の瞬間、目を見開く。
なっちゃんからだ。
まるで文男の告白をライブで聞いていたかのようなタイミング。
文男はどくどくと胸の鼓動が高まるのを感じた。
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