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「おはよー」同期の矢次だった。「なあ、なんかいまカキ氷がどうとか言ってなかった?」
壁が薄いせいで外まで丸聞こえだったらしく、矢次がいきなり核心を衝いてきた。
「いや、なんでない」
そそくさと文男は席を立ち、行きたくもないトイレに入る。トイレは事務所の隅にある。そのトイレもドアが薄く、外の会話が丸聞こえだ。
「それって文男のやつがデートに誘ってるんじゃない! それで、なっちゃんはどうなの?」
ラグビー部だった矢次は体も声もでかい。そしてデリカシーもないから平気で文男の思いをストレートに言い当てる。
まったく嫌なやつだ。
けっきょくカキ氷の話は中途半端に終わり、そのうちに所長と先輩の吉田さんも来て、朝礼がはじまった。
朝礼は簡単なもので、それぞれ行き先と業務内容を告げて解散した。
これから長い一日がはじまる。
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