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再びの故郷日本
俺の名前は岸快晴。ごくありふれた名前の36歳。日本で事故死した後、異世界へ転生させてもらったごく普通のオッサンだ。俺は今、異世界に君臨する女神様の密命を帯び、懐かしの故郷日本に舞い戻って来た。
ここは日本のとある地方都市から少し離れた、閑静な山間の地に広がる墓所。そんな静かな霊園に足を踏み入れているのは、先ほどからずっと墓石の前で手を合わせている男性一人のみ。年の頃は60歳ぐらいだろうか。
霊園から少し離れた高台には、その老紳士を見つめる一人の女性の姿があった。この女性も先ほどからずっと無言で、墓の前に佇む男性を見つめている。
俺はこの女性を探してここまで来たのだ。
この女性、10年前に18歳の若さで交通事故に遭い亡くなった後、異世界において『女神の使徒』として転生した元日本人である。女神の使徒は老化しないので、見た目はずっと18歳のまま。36歳で転生者した俺から見れば、まだ高校3年生のガキンチョにしか見えない。
しかしコイツは俺よりも早く異世界に転生しているので、俺からすると異世界の先輩と言えなくもない。そこで俺は、彼女のことを敬意と愛情を込めて『パイセン』と呼んでいた。
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