Side B

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Side B

「樋口氏! なんでお礼言わなかったの?」  放課後の屋上にて、私はオカルト好きの彼女から説教を受けていた。 「い、言えるわけないでしょ……つ、突き落としてくれてありがとう、なんて……」  そこまで言い訳していて、ふと我に返る。私は昨日起こったことをまだ彼女に話していない。 「……なんで知ってるの?」  尋ねると、手に持っていたノートを奪われた。彼女はページをめくりながら、昨日私がとっていた議事録を確認していた。 「神社の本堂の影に隠れて様子見てた。私も、もしかしたら彼のこと見えるかもじゃない? でも、やっぱりそううまくはいかないわよね。人魂っぽいのも見えなかったし、あなたの声しか聞こえなかった。彼がなんて話しかけていたかは分からなかったけど、あなたの口からお礼のひとこともなかったから」  お目当てのページに辿り着くと、彼女はその内容にザッと目を通し、満足そうに頷いた。 「ギター、クッキー、花火……なるほど。これでようやく彼との仲良し作戦スタートね! ところでひとつ気になったんだけど、花火大会ってうちの地域やってないわよね? いったい、どこの花火大会の話を……」  彼女は意見を求めようと私を見たが、私の視線はすでに別のところにいっていた。私はというと、スマホを開き、『ギター 初心者』と検索をかけるところだった。  次の瞬間、手元からスマホが奪われる。顔を上げると、私のスマホをヒラヒラと見せながら、彼女が笑っていた。 「あなたの求めているものは、この中にはないよ。こんな四角いものと睨めっこするより、いい方法を私は知っている」 「な……何をするの?」  嫌な予感がして彼女に聞くと、彼女の目は一層輝き、私の不安を大きくさせた。 「スペシャリストに聞くの。ついてきて」  そう言うと、彼女は私の手首を引っ張った。 「い、いいって……わ、わ、私ひとりで……」 「餅は餅屋! 案ずるより産むが安し! そうなればあとは前進あるのみ!」  彼女の足はどんどんと加速していく。屋上から階段を下り、廊下を一直線に走っていく。時折先生に注意されながらも、彼女の足は止まらない。手首をガッチリと掴まれた私は、もはや従う以外の選択肢はなかった。
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