【このたび語られるものは】

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【このたび語られるものは】

 大陸は広く、なれば黒社会の広さもまた等しく、その一角に蜘蛛媛(ヂーヂュユェン)なる娼館の元締め在り。  その首魁は(よわい)いくつとも知れぬ老婆、名は誰も口にせぬ恐れに恐れてまだ足りぬ【大奥様】。  して、その配下に七本の蜘蛛の脚在り。  彼女彼らをたかだか娼館の元締め風情と侮るなかれ。  その頭は(おんな)腕一本(うでいっぽん)で周辺七街(なながい)の娼館を纏め上げた千年無双(せんねんむそう)大女傑(だいじょけつ)。  その脚ともなれば、時代さえ(たが)えれば(いず)れの一本も一派為すこと疑い無き大番頭ども。  ここではその一本、《大暴食(ダーバオシー)》の黒狗(ヘイゴウ)について語ろう。
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