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第10章 抱かせていただいてもいいですか
なんだかんだありながら金曜、最終の新幹線に乗れた。
「すみません、なんかギリギリになって……」
ホームに着くと同時に発車のベルが鳴りだした。
もうほんと、間一髪だったわけですよ。
「別にかまいませんよ。
乗り遅れても明日の新幹線にすればいいだけですし」
私の手を引いて漸は車内を歩いていく。
グリーン車で切符に記された席を探し、ようやく座った。
「ううっ、でも……」
店で仕事のあった前途は別行動で、東京駅には昼前には着いたのだ。
駅の中だったらひとりでも大丈夫。
なんて思った私が莫迦だった。
つい楽しくなってあちこち見て回り、漸との待ち合わせ場所に向かおうとしたが、……迷った。
結局、漸に迎えに来てもらったせいで発車ギリギリになったというわけだ。
まあ、おかげで、目的のものはしっかり買えたけれど。
「私でもときどき、現在地がわからなくなりますからね、気にしないでください。
それよりも遅くなりましたが晩ごはんにしましょう。
駅弁、買っておいてくれたんでしょう?
これ、ですか?」
「……はい」
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