第10章 抱かせていただいてもいいですか

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漸は持っていた荷物の中からお弁当を選びだし、あとは全部、棚に上げた。 「私、駅弁って食べたことないんですよね。 楽しみです」 うきうきと漸がお弁当を開ける。 「うわぁ、美味しそうです! ……うん、美味しい」 牛肉弁当を食べて漸はにこにこ笑っている。 その幸せそうな顔にようやく気持ちが上向いてきた。 「なんだかたくさんあって選べなくて。 一番人気だって書いてるのにしました」 私も自分のチキン弁当を開ける。 「そっちも美味しそうですね」 唐揚げとチキンライスのお弁当を見て、漸がにっこりと笑う。 「唐揚げ一個、食べますか?」 「とても引かれますが、遠慮しておきます。 だって鹿乃子さんの分がなくなっちゃいますから」 四つが三つに減ったところで、別にいいんだけどな。 行きと違い、漸はずっと楽しそうに話している。 「本当は暮石さんを可愛い鹿乃子さんに紹介したかったんです。 ほかにも、連れていきたいお店もたくさんあって」 「じゃあ、また今度、行きましょう。 まだしばらくは東京通いが続くわけですし」
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