15人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「……まあ、俺たち職人を大事にしない人間だしな。
そういう人間と縁が切れて、よかったってことだな」
ぽつりと呟き、祖父はパリンと最中を囓った。
父と祖父にだけ話があると、漸たちは工房へと移動した。
「心配させるから、鹿乃子にだけは絶対に言うなって言われたんだけど」
母が新しいお茶を淹れてくれる。
「馴染みの問屋さんから突然、取り引きを切られて。
理由を訊いても後生だからなにも訊かないでくれ、って言われたみたい」
「え……」
それって、私が三橋の家から漸を奪ったから?
漸のお父さんは有坂染色を潰してやると言っていると、漸から聞いた。
一呉服屋にそんな力はないと思っていた。
でも、現実は。
「大丈夫なの?」
「方々に話を持っていっているけど、どこもダメみたいなのよね……」
はぁーっと、母が重いため息をつく。
これって、私のせいなのかな。
しばらくして漸たちが戻ってきた。
夕飯は食べて行けと言われたけれど、そんな気になれなくて家路につく。
「……鹿乃子さん?」
最初のコメントを投稿しよう!