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助手席でずっと私が黙っていて、漸は心配そうだ。
「……私のせいで有坂染色はなくなるんですか」
漸を幸せにすると誓った。
でもその代償がこれだなんて、あんまりだ。
「なくなりませんよ。
私がなくさせたりしません」
「でも!」
「鹿乃子さん!」
漸が大きな声を出し、びくっと大きく肩が跳ねた。
「落ち着きましょう?
家に帰ったらお話ししますから」
「……はい」
真っ直ぐに前を見て運転する漸は、こんな状況なのに少しも揺るいでいなかった。
家に帰り、漸がコーヒーを入れてくれたけれど、手をつける気になれない。
「父が問屋や工房に圧力をかけたんです。
有坂染色と繋がりのあるところとは今後二度と、取り引きをしないと」
隣に座った漸が、そっと私の手を握る。
「呉服業界はいまや、狭い業界です。
直接でないにしてもどこかで繋がっていてもおかしくない。
三橋と直接取り引きをしているところが切られたくないがために、同じように圧力をかけたら……わかります、よね?」
黙って、頷いた。
理解したくなくても、わかる。
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