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「金池様、覚えていますか?」
唐突に三橋呉服店で会ったお客の名前が出てきて、思わず顔を上げた。
「あの方はもちろん、ほかにもおじい様とお父様が作る作品を、きっと気に入ってくださる方を知っています。
そういう方に直接、有坂染色の作品を売ります」
「でも、それだけじゃ……」
売れる枚数はたかがしれている。
「ネット通販もしようと思います。
いまどき、問屋を介さないで売る方法なんていくらでもあるんですよ」
漸はそれですべて解決だ、みたいな顔をしているが、通販で高価な呉服が簡単に売れるとは思えない。
私だってネットで見ながら、何十万もするようなものをネットで買うような人がいるんだろうか、なんていつも思っているし。
「それに金池様に連絡したら、仲間内で販売会を行ってもいいと言ってくれました。
金額も最低ラインはおじい様たちに提示していただきますが、それ以上なら自分が出していいと思える価格で買ってくださるそうなので、単価が上がります」
「そんなの、いいのかな……?」
窮地に立たされても、助けてくれる人がいる。
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