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しかも画面の向こうでは若い女性が盛んにふたりの男性へ喚き立てているが、しかしながら応答ボタンは押していないのでこちらには聞こえない。
「うーん」
精悍な見た目なのに、どうも困り果てているように見える男性たちが可哀想になってきて、応答ボタンを押した。
『いつまで待たす気!?』
瞬間、キンキンとあたまに響く甲高い声が聞こえてきて、思わず画面から距離を取った。
「えっと……。
どちら、様?」
『私、荒木田……』
『さっさと開けなさいよ!
この私がこんなところまで来てやったんだから!』
濃紺スーツの男性は極めて礼儀正しく名乗ってくれているが、女性の声がそれを全部かき消してしまう。
……うん、無視したい。
が、このままでは近所迷惑になりそうだ。
「……どうぞ」
仕方なく、門のロックを解除した。
玄関まで行ってお客の到着を待つ。
すぐにピンポンとチャイムが鳴った。
「はい」
「この私を待たせるなんて、どういうつもり!」
ドアを開けると同時に怒鳴られたが、本当にどなた様?
「あー、喉が渇いたわ」
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