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最終章 ずっと私は貴方のもの
十一月二十二日。
いい夫婦に日に私たちは入籍した。
「これで私は、本当に鹿乃子さんのものです」
帰ってきてからずっと、作った結婚証明書を漸は嬉しそうににこにこ笑って見ている。
「私も漸のものになったということです」
ちゅっ、と軽く、唇を重ねる。
意外だったのは、祖父が早めの入籍を勧めてきたことだ。
本来なら年末に返事をもらうはずだったし、式は春を予定しているから、入籍はそのどちらかにあわせて、という話だった。
『なんでぇ、もう事実上の夫婦なんだから、さっさと籍入れてしまえ』
なんて照れくさそうに首の後ろをぼりぼり掻きながら言われ、ありがたくそれに従ったというわけだ。
「でも、よかったんですか?」
婚姻届の、婚姻後の夫婦の氏は妻の氏にチェックを入れた。
ということは漸は、三橋漸から有坂漸になったということだ。
「いいんですよ。
だいたい、養子縁組みは絶対ダメだっておじい様が首を立てに振ってくださらないから」
はぁっ、と漸の口からため息が落ち、苦笑いしかできない。
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