最終章 ずっと私は貴方のもの

6/41
前へ
/41ページ
次へ
「あっ、こら! じじぃ!」 慌てて父が、祖父の口を塞ごうとする。 ……成人式の着物も祖父に譲った父が私に、花嫁衣装を? 「絶対に鹿乃子の花嫁衣装は、譲らないだってよ」 「だからじじぃ!」 父に愛されていないだなんて思ったことはない。 それでも過剰な愛情を注ぐ祖父に対して一歩引いている父を、淋しくは思っていた。 ……けれど。 「……ありがとう、父さん」 出てきそうになった涙は、鼻を啜って誤魔化した。 「凄く、嬉しい」 「……喜んでくれたんならよかった」 赤い顔で父は、首の後ろをぽりぽり掻いている。 この人の子供でよかったな。 おかげで、最近ずっと考えていたことは、決心が固まったけど。 「打ち掛けは譲った分、掛下は張り切らせてもらったけどな!」 ばさっと勢いよく、祖父が着物を広げる。 「……じいちゃん?」 「おじい様?」 漸も信じられなかったみたいで、何度もパチパチと瞬きをしてそれを見ていた。 「本当にじいちゃんが作ったの?」 「おう。 最近の花嫁衣装を研究してみたんだ。 こういうのもけっこう、面白いな!」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加