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じきに夜は明ける。
布団から気だるい体を起こして、はだけてた襟を
正した。
隣では、昨夜あたしを抱いた客がぐっすりと
寝入ってる。
こんな暗闇の中では見えないが、きっとだらしの
ない顔で寝入ってるんだろう。
格子窓を指でそっと開ければ、月明かりが射し込んでぼんやりと部屋を照らす。
やはりその客は、あの男とは似ても似つかない顔で寝入っていた。
『なぁ知ってるか?
夜はな、絶対に明けるんだよ。』
───そんな当たり前の話をするあの男は、決して隙を見せることはない。
たまにふらりと現れてはあたしを買って、しこたま酒を呑みながらそんな話をして、そしてあたしを
抱く。
酔い潰れても可笑しくないのに、夜が明ける頃には姿を消してる。
まるで夢みたいな男。
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