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「アニキ、おっかねえっす。
暗くて何にも見えねえっす」
「バーロー。おめえが懐中電灯の電池の残量確認しねえから、こんな羽目になっちまったんだろうがよ」
「だってアニキが“急げ”って怒るから…」
“アニキ”と呼ばれた男は、不手際を人のせいにしようとする手下の尻を蹴っ飛ばした。
真夏の汗が噴き出るような夜。
暗闇の中、二人はまさに手探り状態で森の奥深くに向かって歩いていた。
「こんな日に限って、月も出てねえ…」
二人が持ってきた懐中電灯は早々に電池が切れ、手下のスマートホンのライトで急場を凌いでいたが、それもつい先ほど充電が切れた。
「アニキのスマホは…」
「バーローっ!これまで充電が切れたら、何かあった時どうやって連絡取るんだよ。無い頭を絞ってちったあ考えろや!」
アニキと呼ばれた男は、怒鳴りながらも、森に向けて出発する前に渡された地図に書かれた内容を必死に思い出そうとしていた。
---確かこの森の奥に朽ち果てた小さな祠があったはず…。
その微かな記憶を頼りに、男は薄目を開けて、祠のあると思われる方向に向けて再び歩を進めた。
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