317人が本棚に入れています
本棚に追加
そういえば昔から、そうだった。初めて会ったときから緑川健一は美少年だったのだ。あまりにもかわいかったから、誰にも渡したくなかったのだ。
「いいよ……無理に恋人にならなくたって」
健一は控えめにつぶやく。
「まだ言ってんのか、てめぇは」
「だって、ほら、いまさら……でしょ?」
「言わなきゃわかんねぇのか、おまえは。そもそもおまえはずっと前から俺のモンなんだから、つべこべ言わずに俺を好きなままでいろ、俺を求めろ。わかったか」
「なんかさー……独裁者みたい」
「おう、上等だ。俺のモンは俺だけのモンだ」
堂々と言い切ると、健一は吹き出すように笑った。
「そうだったね。考えるだけ無駄だったよ」
「ったく手こずらせやがって。健一のくせにかわいすぎるんだよ、おめぇは」
「な、なにそれ……!」
この瞬間、空也は間違いなく墓穴を掘ったと確信した。
「だから俺もおまえのことは当たり前のように好きだからそばに置いてるってことだよ、わかれよ、それくらい!」
エレベーターの扉が開いても、つないだ先の手は、ビクとも動かなかった。
「おい……」
そう言いかけて振り向けば、健一はぼろぼろと涙をこぼして立ち尽くしていた。
「健一?」
「本当に、本当に……僕、好きでいていいの? くーちゃんのこと、好きでいいの?」
「いいって言ってんだろ、バーカ」
泣きじゃくる健一を抱きしめると、エレベーターの扉は閉まってしまった。まあ、別に急いでいるわけじゃない。
空也はぐしゃぐしゃに泣く健一の頭をゆっくり撫でた。
「待たせて悪かったな」
その言葉に、健一は空也の胸に顔を埋めながら、首を横に振る。そして愛しい恋人の額に頬に、キスをした。
最初のコメントを投稿しよう!