第1章:空也と健一と、そして亮介

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 チームの調和は健一が保っていたように思う。結局、自分に引きずりこまれる形でバンドに参加した健一だったが、自分と亮介に負けたくないと人並み以上に練習したのか、ドラマーとしてもHopesには欠かせない存在になっていた。自分と亮介が喧嘩すると必ず健一が仲裁に入った。空也の女遊びはあいかわらずで、常に火遊びが耐えなかったが、そんなときは亮介よりも健一がめちゃくちゃキレた。バレないように遊ぶ術が身についたはずなのに、最終的には健一には全部バレてた。ふしぎなもんだ。  自分たちがライブをやるたびに男女問わずファンという存在が増えてきた。一度、対バンしたバンドの女ボーカルに手を出した後で、遊びを慎めと健一を始めとするメンバーに言われてからは、めんどくさくない年下の男を性の対象にすることが多くなった。あいつらにだって穴があるし、何より女みたいに言いふらしたりしない。自分が相手にするのは決まって少年のようなかわいらしい男の子で、必ずその柔らかな白い肌に、噛みついて自分の証をつける。彼らは痛さで顔をゆがめながらも噛み痕を嬉しそうに撫でる。その光景を見れば、叶うことのない欲求が満たされたような気がした。  あの頃の自分は女が抱きたかったわけじゃない。ただ音楽以外に興味のない亮介の気を引きたかったんだと思う。亮介は自分が女を抱こうが、男を愛でようが、嫉妬どころか、軽蔑のまなざしを向ける。亮介に浮いた話はなかったが、間違いなく性的指向はストレートだった。もし自分が少しでもその気にさせることができて、男にも興味がある素振りさえ見せてくれれば気持ちを伝える努力をしたかもしれない。  その反動か、とにかく自分は、自分のことをまっすぐに好きになってくれるかわいい男に囲まれ、そんな気持ちを忘れようとしていた。せめて亮介とは仲間でいたい。これからもHopesという絆で繋がれていられるなら、それで十分だ、と。
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