第2章:知らなければよかった想い

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第2章:知らなければよかった想い

***  そして亮介が再び芸能界に戻ることになり、Hopesのメンバーとも 現代に至るわけだが―― 「ちょっと、スカイ聞いてんの?」 「え? ああ」  健一の呼びかけに、空也は生返事をする。彰、亮介、自分、そして健一を交え、打ち合わせが再開していたが、どうにも集中できずぼんやりとしていた。 「しっかりしてよ、みんなそれぞれの時間を割いて打ち合わせしてるんだからね」 「悪い」  今は素直に自分の非を認めて謝った。あまりにも素直に謝ったことに驚いたのか、健一は「もう」っとひとこと言うだけで、引き続き報告を再開した。それは、健一によるライブを支援してくれる企業と交渉した結果報告の最中だった。 「じゃ、グッズ案はそのまま動かしていいんだな?」 「うん、こないだ彰からもらってた企画書、先方にも喜んでもらえたよ」 「その企業、今後Hopesの曲、使ってくれたりしないのか?」 「うーん、そこはりょーくん次第かなぁ?」 「わかったわかった。いくつか書いてくる」 「やった! さすがりょーくん」  健一は彰と亮介を上手に操り、準備を進めていく。Hopesのリーダーは自分だが、おそらく裏のボスは間違いなく健一だ。それに今日はたまたま大和がいないこともあって、まるで時間が十年前に戻ったみたいだ。だからといって亮介が脱退したときの話をわざわざ蒸し返すほど、自分たちは子供じゃない。こうして大人の会話ができているだけで十分だ。  それよりも、今は目の前のヤツらが平然と会話ができていることが不思議でしょうがなかった。 『スカイのことずっと好きだけど、おかしい?』  健一が自分を好きだったという事実にうろたえているのは本当に自分だけらしい。そもそも、健一の気持ちに自分以外のメンバーは知っていて、しかも亮介に限っては十年前から知っていたというのだから解せない。まるで自分だけが蚊帳の外のような気分だ。
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