第2章:知らなければよかった想い

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 しかも、想っている相手に気持ちが知られたことで、もっと慌ててもいいようなものを、健一はこうしていつもと変わらない態度で接してくる。相手に気持ちが伝わるって、なんかこう、もうちょっとドラマチックなもんだと思っていたのだが。 「失礼しまーす」  打ち合わせルームに入ってきたのは立花樹だった。立花は会社員のくせに高校生だと年齢詐称していた事が発覚し、今はトリコロールを脱退いて亮介の付き人兼マネージャのようなことをしている。それもどうやら事務所と会社がグルで推し進めた計画だったと聞いたときはさすがに気の毒になり、今では事務所の事務作業を手伝ってもらったりしている。 「すみません、まだ打ち合わせしてましたか」 「大丈夫だ。樹、スタジオの予約どうだった?」 「明日の午後をおさえておきました」 「サンキュ」  立花と亮介は、今は恋人同士だがこうして仕事場では、きっちり公私を区別している。もともと社会人だったこともあって彼の仕事ぶりは真面目でしっかりしていて評価できる。 「スカイさん、こちらリハーサルスタジオの月間予定表もらってきました」 「おう、ありがとな」 「どうしたしまして!」  そして、いつも笑顔で素直で謙虚だ。かつて空也に襲われかけたことがあるというのに接する態度も変わらない。 「スカイさん、元気ないですね」 「ん? そうか?」 「お疲れですか? 今日はもうこれで終わりですよね。明日はお休みですから、ゆっくりしてくださいね」  優しい天使の笑顔に癒やされる。さすが元アイドルだ。 「蒼クン、いいのいいの。ほっとけば! スカイおじさんはちょっと遊び過ぎなの」  健一が茶化してくる。誰のせいだと思ってんだ、と胸倉をつかんでやりたい気持ちだ。結局、そのまま打ち合わせは最終確認の後、解散となった。
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