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こんな自分を見捨てることなく、支えてくれるメンバーも含め、周囲の大人はどうかしてると思う。だからこそ自分にできるのは、持って生まれた歌唱力と人並み外れたパフォーマンス、そして求められれば最高のものを返す。それでチャラだと勝手に決めて、今まで生きてきた。思えば子供の頃から好き勝手やってきたのは変わっていない。少しくらいは大人になったらしいと思えるのは、人のモノに興味がなくなってきたことくらいだ。
ガチャッと扉が開く音がして、振り向けばそこには亮介と彰が煙草を手にして、こちらへ向かって歩いてきていた。
「やっぱりここにいた。ったく、いい身分だな、社長」
「そういうなよ。俺だって昨日から寝てねーんだ」
「どうせ、カワイイ男でも連れ込んでたんだろ」
「バーカ。マジでそんな暇ねぇよ」
Hopesのメンバーの中では自分と彰だけが喫煙者だが、今日はもうひとりいる。ライブに助っ人として参加してくれている元メンバーの青木亮介だ。かつて、亮介がメンバーだった頃は、よくこうして三人で喫煙タイムをしたものだ。二人は空也を茶化しながら煙草を取り出し、火をつける。亮介は昔と変わらずパーラメント。銘柄がよく変わる彰は、最近ケントの1ミリを愛用しているようだ。
彰は自分よりも一つ年下のベース担当でメジャーデビューから正式にメンバーとして加入した。もともとデザインの学校に通っていたらしく、インディーズの頃からHopesのグッズやチラシ、ジャケットのデザインなども器用に作ってくれていて、今までのライブグッズもすべて彰がプロデュースしている。今日はライブ準備の現状報告のために、事務所に来ていた。
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