第3章:人生の半分以上を一緒に過ごして

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 空也はふらふらとキッチンへ向かい冷蔵庫を開け、常備してあるバドワイザーを一缶取り出す。酒がそれほど得意ではない自分が唯一飲めるビールがバドワイザーで、常にストックしてくれているのも健一だ。バドじゃないビールが入っていると舌打ちする俺に「仕方ないじゃん!」と言い返される。これもこれからは自分で買いに行かないといけないということになる。  冷蔵庫の扉を開けたまま、その場で缶を開け、一気に飲み干す。昼間からビールなんて、ここ最近飲んだことがなかった。以前、昼間から飲みたいと健一に言ったら「ダメ人間じゃん」とゴミを見るような目をされた。今は、そんな文句を言うやつはいない。  そのまま冷えた缶を三本ほど取って、リビングのソファへ移動する。テレビをつけるとどのチャンネルもワイドショーの時間帯だった。芸能ニュースが流れ、見慣れた顔がいると思ったら、今や二人になったTricoloreの緋色と真白が歌って踊っている映像が流れていた。水原蒼が抜けたあと、二人で発売する初めてのシングルだと本人たちが紹介している。そういえば健一は真白とやたら仲が良かったなぁと思い出し、持っていたビールをすぐに飲み干し、すぐに次のビールに手をつける。過剰にアルコールを摂取すると「翌日に顔がむくむんだから、やめなよ」と健一に怒られる。これからは、もうそんなこともなくなるのだ。  思えば、昔から健一は小言が多い。言い返すとうるさいから渋々言うことを聞いてやってたのに、それらのひとつひとつがもう習慣になってしまっている自分に気づく。ライブで暴れる破天荒ボーカルであるスカイが朝起きたら観葉植物に水をやるなんてイメージが違いすぎる。バレて笑われたらどうしてくれるのだ。今の金城空也の大半を作ったのは緑川健一だ。  目の前には健一と見知らぬ男がいた。 『健一、隣にいる、そいつ誰?』 『あ、紹介するね。僕の彼氏』 『彼氏?』
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