第3章:人生の半分以上を一緒に過ごして

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「さっきまでいたけど、もう帰った。家じゃないか?」  健一は休みでもメンバーの誰かが仕事をしていたら必ず現場に顔を出す。そして、亮介からさっきまで健一がいたと聞いて、ほらな、と自分に向かって胸を張る。いや、そんなことは、今はどうだっていい。 「そうか、わかった」 「健一、携帯出なかったか?」 「……かけてない」 「本人にかけろよ。なんで俺に聞くんだ」 「いいんだ。じゃあな」 「あ、おい……」  亮介が何か言いかけていたが、そのまま電話を切った。  空也は健一の番号はもちろん知っている。かかってくることが圧倒的に多いが、かけたことだってもちろんある。家に来ると思っていたのにちっとも来ないときに文句を言うときがほとんだが、ふと思いついた仕事の話を真っ先にするのも健一だった。けれど今は健一に直接電話をするのは、なんだか癪だった。  次は彰の番号に発信した。彰は妻帯者なので、仕事が終わればいつもまっすぐ家に帰っているはずだ。 「お、スカイどうしたの? 珍しいな」 「彰、教えてほしいことがある」 「何?」 「健一ってどこに住んでる?」 「え? どこって……もしかして今まで知らなかった?」  健一が実家を出てひとりで暮らすようになってから、その家に行ったことはなかった。過去に何度か引っ越しをした話は聞いたことがあるが、いつも健一のほうから空也の家に来るので気にしたことがなかった。思えば自分は健一のことを何も知らなさすぎる。いつも一緒にいて、住所すら知らないなんて。 「いいから、教えろ!」 「んー、スカイって今、家にいるの?」 「家だ」 「じゃー、健一はスカイと同じ屋根の下にいるよ」  彰はバカにしたように笑った。 「てめぇ、こっちは真剣に聞いてんだ! ふざけるな!」 「いや、だから、下だってば」 「下ってどこだ!」 「スカイんちの真下の部屋だよ」 「……え?」  緑川健一の住まいは自分と同じマンションだったのだ。
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