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空也は部屋を出てエレベーターで自分の真下の部屋に来た。どうやら彰の言うことは本当らしく、表札にMidorikawaと記されてあった。空也は、おそるおそる、インターフォンを鳴らしてみる。
「はーい」
インターフォンのスピーカーから健一の声がする。
「俺だ」
「スカイ? ちょ、ちょっと待っててね」
スピーカーはプツリと音声が途切れ、部屋の奥からパタパタと歩く音が近づいてきた。ガチャガチャと鍵を開ける音がして、チェーン越しに健一が顔を出した。
「どうしたの、スカイが訪ねてくるなんて、何かあった?」
「おまえ、いつからここに住んでた?」
「えっ、もう更新は二回くらいしたから、五年くらい……?」
「い、言えよ! 下に住んでるなんて知らなかったぞ!」
「えっ、言ったよ! それに毎年、ちゃんと年賀状も送ってるし、引っ越しましたハガキも…」
「住所なんか見るわけねーだろ!」
「そんなの知らないよ! 何なの、そんなことをわざわざ言いにきたの?」
違う。そんなことを言いに来たんじゃない。空也は扉を強引に開こうとして、引っ張られたチェーンの音がガチャッと大きな音を立てる。
「てめぇ、チェーンかけんな!」
「そんな……防犯上チェーンかけたっていいじゃん」
「いいから開けろ! なんだ、俺を部屋に入れられないのか。男でも出来たのか!」
「なにそれ、もう……ちょっと待ってて」
ドアをがちゃがちゃ鳴らす空也を制止して、健一は扉を閉める。そしてチェーンは外され、扉は大きく開かれた。
「もう近所迷惑だから、静かにして…うわっ」
開いた扉から空也はそのまま玄関に割り込み、扉を閉め、目の前の健一の腕を荒々しく掴んだ。
「なんで家に来ない?」
「は? いや、昨日言ったよね、もう仕事以外では会わないようにするって……」
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