プロローグ:あいつが俺を好きなはずがない

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 そして亮介は空也の高校の同級生でHopesの創始者メンバーでもある。就職を機にHopesから脱退したが、十年経った今でもRyoの復活を待ち望む声は少なくない。最近めでたく芸能界へ復帰し、今回はあくまで裏方としてHopesライブの音響面を担当してくれることになった。というか、今年一年は自分には黙って従い、なんでも聞いてくれることになっている。そのくらい亮介には大きな貸しがある。 「おい、彰、カワイイ男って、このバカはまだビョーキ治ってないのか」 「うん。あいかわらずだよ。カワイイ男の子に興味津々で、女は穴としか思ってないよ」 「てめぇら、両刀とかバイとか、もう少し柔らかい言い方があるだろ」  長い付き合いとはいえ、こいつらは人の性癖をなんだと思ってるんだ。 「つーか、もう人のモンに興味ねぇわ。おまえで懲りた」 「自業自得だろ、バカ」 「だって蒼クンは、俺のドストライクだったんだぜ。なんで、てめーが手をつけてんだよ」  要するに空也が、亮介が目をかけている男に手を出して酷い目に遭ったという話だが、被害者である亮介は呆れ顔のまま、はぁっとため息をついて頭を掻く。 「ったく。健一はこんなやつのどこがいいんだか」 「なんでアイツが出てくんだよ」  空也は思わず、煙草を揉み消す手を止める。 「は?」  思い切りマヌケな顔な亮介に、むしろこっちが驚く。 「亮介くん、しーっ」  となりにいた彰が慌てて亮介を静止する。 「まさか、こいつ、まだ健一と何もないのか」  うんうん、と頷く彰に亮介はマジか、と小さく呟き、二人して空也を軽蔑のまなざしで見つめる。なんで、自分が二人にそんな目で見られなきゃならないのか。 そもそも二人のやりとりが何を示すのか、空也には理解できない。 「なんだよ、二人して。なんで健一が関係あるんだよ」 「おまえ、どんだけあいつを待たせてんだよ。いい加減、気づけよ」
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