第4章:恋人として

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「つーか、おまえ、ラジオのレギュラー以外にも他のアーティストのコラボイベントにも顔出してるだろ。ミサキは大丈夫なのか?」  ミサキというのは結婚した彰の嫁だ。彼女は、もともとHopesの専属スタイリストでメンバーの面識もあり、ずっと付き合っていたことも知っていたので、早く結婚しろ、と煽りまくった自覚もある。そのせいで、彰はメンバーの中で最速の妻帯者となってしまったが幸せにやっているのだから結果オーライだ。 「いやー、お嫁ちゃん、最近機嫌が悪くてさ。むしろ俺は家にいないほうがいい感じ」 「おいおい、大丈夫か。家に帰ってこないせいで機嫌悪くさせてんじゃねーのか」  彰はメンバーの中で一番交流が広く、多方面で活躍している。普段から忙しそうなのに、夏フェス準備も加わり立て続けのイベントのせいで家に帰れていないらしい。社長という立場としては一応、メンバーの状態は把握するようにしている。正確には取締役である健一にそういうことをしろ、とうるさく言われているからなのだが。 「まぁ、女ゴコロは秋の空っていうし、そのうち元に戻ってくれるでしょ」 「これだから女はめんどくせぇよな」 「いやいや、そういうところがカワイイのよ、女の子は」 「へーへー」  知ってる相手で惚気んなっつーの。 「遊ぶのは構わんが、不倫はするなよ。未婚の女相手の浮気にしとけ」 「いやいや浮気もダメでしょ。スカイくんの倫理観はいつもブレないね」  別に今までだって人さえ殺さなきゃ何してもいいと思っていたんだが、バンドのイメージが悪くなるので最近は不倫はやめとこうという話になったのだが、世間ではもっと前からダメだったらしい。 「俺はともかくさ、スカイくんこそ、恋人と甘い時間過ごせてないんじゃない?」 「いらねーよ、そんなもん。毎日、同じ職場で会うし、同じ家に帰ってるし」 「それじゃ仕事モード抜けられないじゃん。おはようのチューとおやすみのチューは忘れちゃダメだよ」 「メンバー同士のキス、想像すんな」  そう。何を隠そう、自分の恋人は幼馴染であり、バンドメンバーの健一だ。当然、メンバーも周知の事実である。
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