第4章:恋人として

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「けど俺もあいつも付き合う前と今で何も変わったところはない。だから期待されるような艶っぽい話もないからな」 「えー、そーなの? つまんなーい」 「何、期待してたんだ、悪趣味だな」  あからさまにがっかりした表情を向けられても困る。 「ちょっとスカイ!」  突然、屋上の扉が音を立てて開き、そこには息を切らした健一が立っていた。 「おお、噂をすれば」 「なんだよ、ヤニくらいゆっくりさせろよ」 「さっきから桜庭さん、応接室で待ってるよ! もう打ち合わせ過ぎてるってば!」 「もうそんな時間か」  空也が手に持っていたスマホの画面をみると大量の着信通知とスケジュールを知らせる何度目かのアラームが表示されていた。全然気づかなかったんだから仕方ない。 「まあ、少しくらい待たせてもいいだろ、あのババアなら」 「いつもそう言って、時間通りに始められたことがないからわざわざ事務所まで来てくださったんだってば」  ババアは否定しないのか。 「そうだっけかー」 「もー!」  近づいてきた健一は空也の腕をつかんでそのまま連れ出そうした。 「おい、タバコ! 火ィついてるって」 「アキラ、没収して!」 「ういっす」  彰は空也の指から煙草を回収する。このオカンモードになった健一には彰も逆らえないので、黙って従うのみだ。 「あ、スカイくーん、俺、この後ラジオ収録だから」 「おう、いってらっしゃい」  引きずられながら階段を降り、彰に手を振る。その間も、健一はぶつぶつ文句を言っている。  こんなんじゃ、甘い恋人なんて程遠いよな、と呆れつつ、空也はズルズルと応接室まで引きずられていった。
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