第5章:嵐の前の静けさ

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 夏フェスを楽しみにしているのはメンバーだけではない。当然、Hopes、そしてフェスに出演するアーティストのファンもだ。そしてイベントが大きくなればなるだけ関係者が増える。もう自分一人だけの問題ではなくなるのだ。   結局、それからは現状の進行状況の報告を桜庭から受けて、打ち合わせは短時間でお開きとなった。 「はぁ、めんどくせぇな」  桜庭が帰ったあとの会議室で、空也は大きくため息をついた。 「お疲れ様、スカイ」 「こういうしがらみが嫌で独立したってのに、どこにいっても一緒かよ」 「それは仕方ないよ。大きなイベントをやるってことはそれなりに資金がいるわけで、せめてスポンサーが気持ちよく出資してもらえるようにしないとね」  健一の言うことは、いちいち正論だからムカつく。 「今日はこれで終わりだから、帰ろっか」  さすがに気の毒かと思ったのか、健一の声音が優しかった。こういうところも癪だが、健一に非がないことはわかっている。空也は黙って、会議室を出る。  そして二人はそのまま、健一の運転する車で帰宅した。
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