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「どうした?」
「いや、マナはこれがうまくいけばソロデビューさせてもらえるという話だと言っていた」
「あの歌唱力じゃ売れないだろ」
「ちょ、亮介くん」
亮介の辛辣な言い草に彰が吹き出す。
「俺も似たようなことを言った。なんなら面倒見てやると」
「おいおい、無責任なこと約束するな」
「でもそれが一番いいかもしれません。今のクレセントムーンは本当に下火ですし」
「ちょっと、蒼くんまで」
「それにマナさんは優しい人なんです。俺を最後まで引き止めてくれてました」
「ああ、おまえが事務所に残っていたらチャンスがあったかもしれないって言ってたな」
「決まりだな。うちで引き取れ、スカイ」
「ちょっと待ってよ、みんな何の話をしてるの!」
それまで黙っていた健一が慌てて口を出す。
「だから言ったろ、俺らとマナは被害者なんだよ。敵は川嶋ってことで一致してる」
「いくらなんでもおかしいでしょ」
「うん。雑誌出る前にこっちに引き抜いてしまえばいいもんね」
「彰まで!」
「じゃ、方針は決まったな」
「俺、マナさんに連絡とってみます」
「よし、じゃその方向で俺と彰で桜庭さんと話をする」
「待ってってば」
亮介を中心に、わいわいと会議室を出ていこうとするメンバーを引き留めようとする健一の前に、大和が立ちはだかった。
「こら、大和どきなさい!」
「健一は来たらダメ。まずはスカイと仲直り」
「別に喧嘩してるわけじゃ」
「大丈夫。スカイは健一のこと大好き」
「は、はあ?」
「二人は今日仲直り。明日はみんなで考える。いいね?」
大和に頭をぽんぽんされた健一は、何か言いたそうな顔のまま、ひとまず了承したようだ。
ばいばい、と手を振って大和が会議室を出ていくと、空也と健一だけしかいない会議室はしんと静かになった。
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