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「もうスカイを好きでいるのはやめようと思ったんだ。この先、自分から気持ちを伝えるつもりなかったから」
「で?」
「一度だけ男の人と付き合った。優しい人だった。セックスもしたけど義務感しかなくて。どんだけ優しくされても、その人では僕の気持ちは埋まらなかった」
申し訳なさそうに小さく顔を上げた健一の唇を掬うようにしてキスをする。何度も優しく触れるだけのキスをする。これから何度だってこうしてキスをしたいと自然に思えた。
「もう俺のことで我慢しなくていい。好きだといいたければ言え、キスしたいときには近くに来い、抱いてほしければ手を伸ばせ、抱いてやるから」
「そっか。そうだよね、もう我慢しなくて……いいんだ」
「いいに決まってるだろ」
健一の両手が空也の首に伸びてきて、控えめに唇をねだれば、空也の唇は引き寄せられるように触れる。小さな舌が遠慮がちに忍んでくれば、吸い寄せて舌を絡ませる。その健気で小さな欲望にすべて応えてやりたくなる。
――これが俺にしか見せない緑川健一なのか。
力を入れれば壊れそうで、手を伸ばせば怯えて逃げてしまいそうな、その小さな欲望のが愛しい。もっと求めろ、もっとよこせ。
小さな蕾を指二本、三本を増やし、中をかき混ぜては、指先で探る。絡ませた舌の反応と震える唇の動きに神経を集中して、反応のひとつも逃さない。引き抜こうとした指先がとある場所に触れた瞬間、身体がぶるっと震えた。
「見つけた、おまえのイイトコ」
「んっ……んんっ」
ひっかくように指先で執拗に弄れば、健一は唇から離れ、胸に顔を埋め、身体がびくびく跳ねさせる。
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