第10章:反撃の狼煙

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「で、お前はどうするんだ。あの事務所に戻るのか」 「今はまだ、考えられません」 「じゃあ、いつ決めるんだ」 「……」 「すぐに決めろ。お前はどうなりたいんだ」  空也の言葉にマナは体を震わせるだけだった。別に脅すつもりもなければ、怖がらせるつもりもない。ただ、仲間として欲しいのは覚悟のあるやつだ。この芸能界を生きていく覚悟を決めた奴しか、仲間とは認めない。 「お前は悔しくないのか。ここに来たのはどうしてだ?」  今度は、亮介が優しく語りかける。 「それはスカイさんに、謝りたかったから」 「俺は別になんとも思ってねぇ。俺を利用したければすればいい。ただ、川嶋の狙いはお前をデビューさせることじゃない。俺たちを貶めることだ」 「えっ」 「俺たちは川嶋にとって芸能界で一番鬱陶しい奴らだからな」 「そうそう。唯一、俺たちは思い通りにならないしね」  すべての事情を把握しているメンバーはうんうんと頷く。 「だから俺たちは、あいつに一泡吹かせてやろうと思ってる」 「そんなことできるはずが!」 「マナさん」  声を荒げようとしたマナの肩に、蒼が優しく手を置く。 「俺はここでいろんなことを学ばせてもらってます。でもあの世界に戻ることを諦めたわけじゃないです。誰にも文句言わせない実力をつけてから、あの二人の元に戻りたいと思ってるんで」 「蒼くん」 「マナさんは一番俺の心配をしてくれましたよね。この人たちなら大丈夫です。だからマナさんも一緒に見返してやりましょうよ」 「見返す? 川嶋さんを?」 「そうです。あの華やかな世界に自分の実力で戻りましょう。川嶋さんの力を借りずに」 「そんなことできるかな」 「マナさんならできるはずだって俺は信じてます」  蒼の瞳は真っ直ぐマナを見つめていた。自分もかつて同じような決断をしたから、その言葉は重い。 「蒼、よく言ったね」  会議室に入ってきたのは、健一だった。 「健一さん」 「扉の外で聞かせてもらったよ。君がマナさん?」 「……!」  突然の健一の登場に、マナは両手で口を抑え、悲鳴を上げないようにしている。そうか、ずっと会いたかったな。 「ねぇ、頑張ってみない? 僕たちがついてるからさ」 「……うぅ」 「スカイのこと、信じてみて。僕たちスカイにずっとついてきて、今があるし、これからもきっと面白くてワクワクすることばかりだから」  亮介と彰がニヤニヤしながらこっちを見てるが、目を合わせてやるものか。 「あの……」 「何?」 「私、頑張ります! 健一さんと同じ事務所で働けるなら!」 「そっちかよ!」  ドッとその場でみんながずっこける。なんだよ、最初から健一が説得すればよかったんじゃねぇか、と呆れる。いや、きっと決め手になったのは健一の言葉だったんだ、と思いたい。  しかし、なんだかよくわからないやつが仲間になったものだ。まぁ、健一のことが好きすぎるってのが仲間になった理由でも、今はよしとするか。
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