第10章:反撃の狼煙

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*** 「うっす」 「あら、おはよう。失恋カリスマボーカリストのスカイくん」 「うるせ、クソババア」  会議室に入るなり、先に打ち合わせをしていた桜庭に声をかけられ、全力で悪態をつく。ババアと呼ばれることに慣れつつある桜庭は目の前にいる健一と顔を見合わせ、笑い出した。  マナと会議室で話してから一週間が経過し、ちょうど昨日、空也のスキャンダルが掲載された雑誌が発売された。その雑誌の発売を日本中が待ちわびていて、結果、雑誌は飛ぶように売れた。 『マジで撮られてんじゃん、スカイ。ウケる』 『なんか気の毒。アイドルから見放されて、スカイも、もう若くないね』 『ライブで慰めてあげようよ』  雑誌を読んだ若者から、そんな声が街中に溢れた。それもそのはず、雑誌が発売されるまでにメンバーたちが揃ってスカイのスキャンダルを暴露したからだ。  手始めは、彰がレギュラー出演している生放送のラジオ番組から始まった。急遽ゲスト出演したスカイに向かって、彰がイジり始めたのだ。 「今日、スカイをゲストに呼んだ理由わかる?」 「は? 知るか、そんなもん」 「慰めてあげようと思ってさ」 「なんのことだ」 「クレセントムーンのマナちゃん口説こうとして自宅に呼んで逃げられたんでしょ」 「はぁ!?」  彰の突然の暴露にリアルタイムでラジオを聞いていたリスナーは驚いたと同時に、SNSで拡散をはじめた。 『えっ、スカイがアイドル口説こうとして逃げられたwww』 『スカイならやりそう。逃げられたの、ざまあ』 『マナってあのセンターの子か。スカイってそういう趣味なの?』  今まで、めったに流出することがなかったスカイのプライベートに日本中が沸き、スカイを慰める方向に動いていったのだ。  そして屈辱のラジオ番組出演のあとで、ネットのバラエティ番組の準レギュラーである大和にもその話題は及ぶ。 「ねぇ、ヤマトくん。君んとこのリーダー、なんだか気の毒なことになってるよね」 「自業自得。もうスカイは若くない。これからは俺の時代」 「おっと、ヤマトくんの下剋上発言!」  調子に乗った、というか、彰の指示に忠実に従った大和の発言は、尾ヒレ背ビレがついて、リーダー交代か、といったHopesメンバーの下剋上という話題に飛び火する。
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