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「聞いてよ。なぜかスポンサーが増えたのよ。理由聞いたら、スカイが気の毒だからライブを成功させてあげたい、ですって」
「それは予想外の結果ですね」
「それくらいのことがないと割に合わねぇ。俺は人生の中で一番の屈辱を味わった」
「いいじゃない。あなたもいい年齢なんだから、もう少しお茶の間でかわいがられたほうがいいのよ。昔ヤンチャしてた若者っていうキャラでさ」
「ふざけんな」
「まぁ、個人事務所だからすぐに英断できたのよね。スキャンダルを逆手にとるなんて作戦、普通は浮かばないわよ」
はっきりいって、国民のオモチャになった気しか、しない。とはいえ、今回のことは自分の軽率な行動から始まったことなので文句を言える立場ではない。しばらくはおとなしくイジられていることにする。あまりにもしつこいようなら、ブチキレて暴れてやる所存だ。
「じゃあ、ひとまず今回は問題なしということでよろしいでしょうか」
健一がおそるおそる桜庭に尋ねる。
「もちろんよ。かえっていい宣伝になったわ、スカイもこれに懲りて、火遊びはしないことね」
「してねぇっつってんだろ」
「はいはい。じゃあ、そろそろ行くわね」
桜庭は笑いながら立ち上がる。打ち合わせもちょうど終わっていたようだ。
「桜庭さん、本当にご迷惑をおかけしました」
「まぁ結果オーライよ。健一くん、これからもよろしくね」
「はい!」
「早く帰れ、ババア」
「ちょっと、スカイ!」
隣の健一に睨まれる。
「こんなのがいいんだから、健一くんもいい趣味してるわよね」
「……!」
桜庭の言葉に健一が絶句している。あれ、なんで知ってんだ?
「付き合い始めたの、最近なんでしょ? なんか健一くんが急に丸くなったのよねー」
「えっ、あの、そんなことはっ」
「いいからいいから。誰にも言わないから安心して、じゃあね」
「おう」
「あのっ、桜庭さん! 違いますって……行っちゃった」
桜庭はそのまま会議室を出ていった。残された健一は、はぁ、と肩で溜息をつく。
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