エピローグ:空には虹があって

8/9
310人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
「言っただろ、すぐ決めろ」 「……私が決めてもいいんですか?」 「おまえの人生だ、おまえが決めろ」  空也の言葉に、マナを大きく深呼吸し、Hopesのメンバーを順番に見渡し、最後に大和を見つめてから、黄太郎に向き直った。 「一年ください。イエキャブの楽曲、全部完璧に吹いてみせます。そうしたら正式にメンバーに入れてください」  聞き覚えのある言葉に思わず、空也と健一と彰は、吹き出した。大和と亮介、そして言われた黄太郎もキョトンとしている。 「はっはっは、マナ、おまえ最高だな」 「すごいよ、マナちゃん。マジでHopesのファンだな」 『一年ください。Hopesの楽曲、全部完璧に弾いてみせます。そうしたら正式にメンバーに入れてください』  それはかつてRyoが抜けた後、大和が残されたメンバーに告げた言葉だった。その後、大和は1年かけてHopesのカリスマギタリストだったRyoの演奏を完璧にコピーして正式なメンバーになった。これはファンクラブの会報だけに載せた、大和の伝説のエピソードでもある。それをここで引用してくるあたり、さすがだ。 「黄太郎、マナは俺が惚れた女だ。くれぐれも大切にしてくれ」 「わかった」  再び、黄太郎は空也と握手を交わし、今度はマナに向かって手を差し出した。 「待ってるぜ、マナ」 「はい!」  そしてマナは空也に向き直った。その目には涙が今にも溢れそうになっていた。 「俺は去るものは追わん。でも、おまえは見る目がある。なんたって健一のファンだからな」 「ありがとうございます。でも私、健一さんのこと諦めてませんから」 「おもしれぇ。なら、この世界でのしあがれ。そうしたら健一が認めてくれるかもしれないぜ」 「頑張ります! ありがとうございました」  マナは空也とも握手を交わした。  こうしてマナはこの日からイエキャブのサポートメンバーとなった。そして一年後、イエローキャブレーションの正式メンバーとして加入することになるのだった。  
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!