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「言っただろ、すぐ決めろ」
「……私が決めてもいいんですか?」
「おまえの人生だ、おまえが決めろ」
空也の言葉に、マナを大きく深呼吸し、Hopesのメンバーを順番に見渡し、最後に大和を見つめてから、黄太郎に向き直った。
「一年ください。イエキャブの楽曲、全部完璧に吹いてみせます。そうしたら正式にメンバーに入れてください」
聞き覚えのある言葉に思わず、空也と健一と彰は、吹き出した。大和と亮介、そして言われた黄太郎もキョトンとしている。
「はっはっは、マナ、おまえ最高だな」
「すごいよ、マナちゃん。マジでHopesのファンだな」
『一年ください。Hopesの楽曲、全部完璧に弾いてみせます。そうしたら正式にメンバーに入れてください』
それはかつてRyoが抜けた後、大和が残されたメンバーに告げた言葉だった。その後、大和は1年かけてHopesのカリスマギタリストだったRyoの演奏を完璧にコピーして正式なメンバーになった。これはファンクラブの会報だけに載せた、大和の伝説のエピソードでもある。それをここで引用してくるあたり、さすがだ。
「黄太郎、マナは俺が惚れた女だ。くれぐれも大切にしてくれ」
「わかった」
再び、黄太郎は空也と握手を交わし、今度はマナに向かって手を差し出した。
「待ってるぜ、マナ」
「はい!」
そしてマナは空也に向き直った。その目には涙が今にも溢れそうになっていた。
「俺は去るものは追わん。でも、おまえは見る目がある。なんたって健一のファンだからな」
「ありがとうございます。でも私、健一さんのこと諦めてませんから」
「おもしれぇ。なら、この世界でのしあがれ。そうしたら健一が認めてくれるかもしれないぜ」
「頑張ります! ありがとうございました」
マナは空也とも握手を交わした。
こうしてマナはこの日からイエキャブのサポートメンバーとなった。そして一年後、イエローキャブレーションの正式メンバーとして加入することになるのだった。
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