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 客を街灯の向こうに見送り店内に戻ると、成田は息をついた。  ポケットから時計を取り出した。夜7時前だ。今日も何事もなく終わろうとしている。  昨日保科が来たのは今より少し遅い時間だったな、と考えかけて、切り替えるために店内を軽く見まわした。  商品の向き整えてから、作りかけのミニギフトに手を延ばす。この季節はこういった小さな贈り物がわりと出る。  成田は深い緑のリボンを手に取った。蝶結びを作りながら、目がカウンター席に向いた。  保科はあの真ん中の席に座っていた。  成田が差し出したカップに指を絡め、持ち上げる。口元に寄せ、かたむけ、コーヒーを口にし、のどが動く。  目の前で保科の姿が再生された。  今そこに彼がいるように魅入っていたが、まばたきをすると一瞬で消え去った。  手元を見ると、結んでいたリボンがほどけていた。成田はため息をついた。今日はずっとこの調子だ。ちょっとした隙間さえあれば、彼のことが浮かぶ。  保科が来るのを待っているのだろう、と他人事のように考えた。  昨日来たばかりの客が、今日も来ることはほぼない。また来ると言って来ない客もいる。近くに住んでいるようだから、気が向けばそのうち来るだろう。来なくてもいい。  保科の雰囲気がちょっと気に入って、印象的な言葉を話しただけだ。彼はそういう種類の人に見えない。冬が、成田を寂しくさせている。  リボンを結び直し、かごに並べた。  ドアが開く音がし、成田は顔を上げた。 「こんばんは」 「いらっしゃいませ」  冷えた空気をまとい入ってきたのは保科だった。反射的に挨拶をしたものの、すぐにその後の言葉が出なかった。  昨日と同じ、スーツにコート姿だ。成田の顔を見ると、保科は目を細めるようにして笑った。 「昨日のコーヒー」
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