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 寒さがいくぶん和らぎ、雲間から高く澄んだ濃い青がのぞいていた。  今日は普段より人通りが多い。年が明けを待つ独特の、そわそわと浮き足立つような、凛として静まり返るような匂いがしていた。  年内の最終営業日になった。  定休日を返上して大掃除は終えており、ディスプレイも年始に合わせ変更している。あとは今日の営業を無事に終えるだけだった。  昼過ぎ、一度に3組の客があり、その後も途切れず何組か続いた。  はじめて来店した女性の接客をしているときに、また店のドアが開いた。 「いらっしゃいませ」 「成田さん、こんにちは」  馴染みである男子中学生の二人組がそろって入ってきた。 「こんにちは。ちょっと待っててね」  夏生と皐月はカウンターの前に並んで立った。頭を突き合わせて、小声で話をしている。相変わらず仲が良さそうだ。放っておいても、二人いれば退屈とも無縁のように見える。  夏生の祖母の持つアパートに成田が住んでいたのは、4年ほど前のことだ。学生の頃からなので、5年はいたことになる。元々は夏生と成田の祖父同士が知り合いだった縁だ。  夏生と皐月、幼なじみの二人は、時々この店におつかいに来る。どちらの家からも贔屓(ひいき)にしてもらっているが、たいてい二人一緒にいるので、頼まれると連れ立って来ることになるらしい。  彼らも年が明けてすぐに高校受験が控えている。はじめて会った頃はまだ小学生だった。大きくなったな、と親戚のようにしみじみしてしまう。  客を見送ると、二人がこちらへ来た。 「ごめんね。お待たせしました」 「いえ、全然。ブレンドください」  夏生が言った。今日は藤田家の買い物らしい。 「1袋でいい?」 「2袋。知り合いにあげるそうなんで」 「そっか。ラッピングしたほうがいいのかな」 「それは、なくて大丈夫です」 「かしこまりました」  かごから商品を取り、小分けの袋と小さなリーフレットとともに手提げの紙袋に入れた。
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