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 さっきチェックしたニュースによれば、電車はほとんど動いていないらしい。保科は今日来ないかもしれない。店が始まったら、と言っただけで、今日とは約束しなかった。  今さら保科の連絡先も知らないことに気づいた。よく考えてみれば会ったのは片手で余るくらいで、最後の一度は偶然だった。  保科が帰った後、眠れなかった。自分の部屋にいた保科の存在を探し、唇に残る感触を確認した。熱を持っただるい体で何度も寝返りをうち、朝方に眠った。  あのままずっと一緒にいたかった。  また来て欲しいと言いながら、ひとりでいると自分に言い聞かせながら、ずるずると引き延ばしてきた。それも終わりにしようと思った。  それなのに今、待つ時間が成田の気持ちを鈍らせている。  まだ保科のことをよく知らない。  彼がずっと成田と一緒にいてくれるのか、保証はない。保証は誰にでもないけれど、それが他の人たちよりも遠く思えた。  保科は成田と同じとは思えない。今だけかもしれない。  成田はカウンターに両腕をつき、その中に顔をうずめた。  今頃になってこんなことを考えるなど、自分でも呆れる。苦しさを追い出すように息をはいた。 「保科、来ないかな……」  成田は顔をかたむけ、外に目を向けた。  ドアの前に人影が見え、成田は体を起こした。背の高い影が傘を閉じ、コートの雪を払っている。  成田は席を立ち、ドアをそっと開けた。保科がこちらを向いた。凍るような空気が店に流れ込んだ。 「もういないかと思った」 「……なんとなく、帰れなくて」  成田がドアを大きく開け、保科は靴底の雪を落とし中に入った。 「電車がなかなか動かなくて、遅くなった」 「大変だったね」  そう言いながら成田はカウンターに入った。
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