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身勝手
妹の咲が結婚する
相手は咲と同じ大学だった宮田充という男だ
咲が宮田と出会ったのは大学2年生の頃
宮田の一目惚れで付き合うことになった
咲は飽きっぽい性格だったが、宮田とは気があったのかその付き合いは大学を卒業し、咲が就職してからも続いていた
そして、咲が26歳になった春。
晴れて咲と宮田は結婚することになった
しかも、咲はすでに妊娠している
いわゆる「授かり婚」というやつだ
今日は、宮田が挨拶に来ることになっている
仕事に追われている俺も今日ばかりは実家に呼び戻され
両親と共にそわそわしながら、宮田と咲の到着を待った
「ピンポーン」
チャイムがなる
母が玄関までそそくさと走って、急いでドアを開ける
そこには、スーツを着た宮田と淡いピンクのワンピースを着た咲が立っていた
宮田は茶髪に染めた長い髪をひっつめて後ろにくくり、少しだけツリ目がちな目で母に丁重に挨拶をした
咲とは正反対のタイプだが、見た目の割に礼儀正しい男だ
咲はそんな宮田を大きな澄んだ目で見つめている
ノースリーブのワンピースからのぞく咲の肌は白く華奢な体は折れそうだ
腹部を見てみるが、まだ目立ったふくらみはない
居間に通された宮田はしゃちこばった様子だったが、やがて切り出した
「この度はお嬢様とのご結婚の報告に伺いました…」
ぎこちない言葉をなんとかつなぎ合わせながら宮田は父と母と、兄である俺の目をかわるがわる見ながら挨拶を続けた
両親は泣いて喜び、結婚を承諾した
「充くん、娘をしあわせにしてやってくれ」
「咲、充くんと支え合って生きていくのよ」
両親は結婚挨拶でよくありそうな言葉を並べて二人を祝福した
「兄さん」
咲が両親と宮田から離れて俺の側に寄り添う
「宮田と、うまくやるんだぞ」
「分かってるわ、ありがとう、兄さん。それより見て。お腹少し膨らんだと思わない?」
「そうか?まだ、そんなでもないと思うけど…」
「でも、この子ってば時々お腹を蹴るのよ。検診に行って分かったんだけどね、男の子みたいなの」
「へえー、もう性別まで分かるんだな」
咲は俺の手に細い指を絡め、潤んだ瞳で俺を見上げて言った
「うん。きっとこの子、兄さんに似てやんちゃなのよ」
俺の子が咲の腹に宿っている、愛おしさが溢れ出し、俺は思わず咲の肩を抱いて言った
「咲、宮田と一緒になっても俺はずっとお前のそばにいるからな」
咲は目を細めながら、俺の首筋に指を這わせた
その指は冷たくぞくりとする
「私、幸せよ」
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