第33話 令嬢の恋

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第33話 令嬢の恋

フェアが終わり、しばらくした頃だった。 「私、新崎(あらさき)に戻ります」 聞き間違い? 私は新しいメニューのサンプルを選んでいた手を止め、詩理(ことり)さんを見た。 フェアが好評だったため、定番メニューを大幅リニューアルするため、メニューが一新する。 詩理さんは一緒にやったフェアのメニューを眺めて、微笑んでいた。 「お父様から戻るようにと連絡がありました」 「詩理さん、で、でもっ!戻ったら結婚させられてしまいますよ!?」 遠堂(えんどう)さんを見たけれど、表情は微動だにせず、パソコンの画面に顔を向けたまま、何も言わなかった。 天清(たかきよ)さんからも何もない。 二人は知っていたのかもしれないけど、どうして止めないの!? 「私、月子お姉様がお兄様と幸せになるために頑張っている姿をみて、私も逃げてばかりじゃいけないって思ったんです」 「そっ、それは天清さんが一緒にいたから頑張れたんです!一人でなんて頑張れません!」 泣きたい気持ちでそう言うと、詩理さんはバッグからゲーム機を出して、私に返した。
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