第33話 令嬢の恋

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何度もかざして眺めていると、天清さんがいつの間にか私の前にいて微笑んでいた。 「まさか、月子。結婚指輪をはずさないよね?」 「ま、まさかぁー!そんなことしませんよ。天清さんとの愛の証を!」 こっそりつけてみようかな?と思っていたことはバレバレだったけど、天清さんの笑顔が怖くて慌てて否定した。 ―――なんて鋭い。 「大切に飾っておきます!私の趣味部屋に!」 「えっ!月子。そんな部屋あった!?」 「押し入れです」 天清さんはえー!?と驚いていたけど、私は首を横に振った。 「天清さん。鶴の恩返しの話を知ってますか?」 「もちろん、知ってるよ。鶴が機織りをする話だよね?」 「そうです。妻は機を織る所を見られたくないんです。だから、趣味部屋は絶対に入らないで下さい」 「わかった……」 天清さんは真面目な顔でうなずいてくれたけど、遠堂さんは『天清さんに向かって何言ってんだ?コイツ』という目で私を見ていた。 夫婦と言えども秘密にしたいことはあるんですよっ!! そう目で訴えたけど、遠堂さんには伝わらなかった。 私と目が合って眉間の縦皺が増えただけだった―――
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