第36話 偵察

3/4
前へ
/226ページ
次へ
「知るわけがない。こっちとは無関係だ。新崎のマンションからも追い出したからな。今頃、カプセルホテルにでもいるか、公園でテントでもはってるんじゃないのか」 「そ、そんなっっ!!なんて酷い!」 私が目に見えて狼狽えていると、馬鹿にするかのように鼻先で笑われた。 「酷い?こちらは契約書通りの対応をしたまで」 「契約書?」 「そう。契約書を交わしている。親子であってもな。天清も同じだ。約束をする時は必ず契約書を交わす。今も一枚、持っているぞ」 「……内容は?」 「知らないのなら、教える気はない」 そう来ると思った。 意地悪な人だ。 「天清は新崎からは逃れられない。大きな約束ほど取引はでかい。これは当たり前のことだ。娘も同じ。なにかを得ようとするならば、代償は支払ってもらう」 「ギブアンドテイクすぎませんか?……けど、詩理さんにはタダで会わせてください」 「タダで?」 「フェア対決の話に乗ってあげた分と勝った分の支払いがまだです。とりあえず、話に乗った分を支払ってもらいます」 「……意外と図々しいやつだな」
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4790人が本棚に入れています
本棚に追加