第1話 結婚

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「新崎の家が婚約者に逃げられた話はなかったことにしたかったらしくてな。お見合いという体裁を整えて、顔合わせをしたらしい。まあ、結婚ともなるとうるさい女より暗くても大人しい女の方がよかったんだろう」 本人にしっかり聴こえているよ。おじさん達。 親戚のおじさん達が私を『暗い』『地味』などと、繰り返し言っている声が聴こえてくる。 元々俯いていたけれど、畳の目が見えるんじゃないかってくらいに今は俯いていた。 そうだ…。 終わるまで畳の目でも数えればいいんじゃない? 我ながら、なんて名案。 少しは気も紛れるはず。 「えーと、大丈夫?頭、重い?」 畳の目を数える前に隣に座っていた結婚相手の天清(たかきよ)さんに声をかけられて、ひえっと声をあげそうになった。 ぶんぶんと首を横に振ると 「そっか。なら、よかった」 ホッとしたように言われた。 いい人だ。 こんな私と結婚だなんて、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 俯いているのは頭が重いわけじゃない。 長い髪のおかげでカツラをかぶらずにすんでいた。
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