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あの日から僕は、心を閉ざした。
大好きだったママとも口をきかなくなり、パパが家にいるときも、不憫で目を合わせることができなくなった。
まるで地球がまばたきで目を閉じるように、心の中は暗闇で何も見えない。もはや出口を探すなんて不可能だ。
そして、相変わらず僕は、あの瞬間を待っている。この世界が真っ暗闇に包まれる瞬間を。
でも、眠気ってヤツは強敵で、そんな僕を容赦なく眠りに突き落としてしまう。だから、あの日以来、奇跡の瞬間には出会えていない。
僕は思う。きっと、地球がまぶたを閉じている間だけは、心を解放することができる。僕の心の中では、無数の星たちが輝きを放ち、まん丸い月が眩しく煌めくだろう。暗闇と同化して、騒がしいほどに明るい空を見上げたい。密やかなその願いが叶えば、どれほど幸せだろうか。
気づけば僕は泣いていた。
そして、またしても聞こえる階下からの汚れた咆哮。大人という生き物はみんな、欲にまみれたケダモノなのだろうか?
僕はカッと目を見開き、涙を拭う。
僕がやらなければ。
意を決し、寝室へ向かおうとした僕を包んだのは、地球のまばたき。溶けてなくなりたくなるほどの真っ暗闇。
「地球さん、今から寝室に行ってケダモノを退治してくるよ。だから、もう少しだけ、目をつむっていてね」
世界は暗闇に覆われているはずなのに、なぜだか僕の手に握られたナイフだけが、鋭い光を放っていた。
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