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(ルカ、苦しいなら語らないで。私が全てを受け取るから)
頬を覆っていた一方の手を背へと回し、呼吸の度に上下する胸の動きに合わせてゆっくり撫で下ろす。言葉にならない意識が、もう苦しまないでと伝わって来る。
止まっていた涙が、また溢れ出した。
厳しい環境に身を置く以上、自然も命も優しくはないと認識していたから。
彼方の星で、思い遣りを手にするなんて。
この優しい命が滅びを回避し、繁栄するなら全てを捧げてしまって構わない。
その贈与が、僕の恋心を成就させる行為となんら違わない命の営みにも感謝した。
(あげるよ……。僕の全てをあげる)
彼女の心配そうに覗き込む目を見つめて微笑み、そっと真珠色の胸元に頭を垂れる。
意識するのは最も知りたいもの。
(……君の名前を教えて)
(私の、名前……)
考える仕草をし、彼女は切な気な溜息を吐いた。
(ないの。私は、副女王の一つとして皆に認識されているだけで、特別な呼称はないの。それに発音してもルカには伝わらない)
ああ、これ程に愛しい人を悲しませてしまったと後悔が僕を苛む。
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