星辰航路

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共通祖先(コモノート)提唱(ていしょう)された言葉が地球にはある。それは歴史の積み重ねと共に姿を変えて、生命最終共通祖先(LUCA(ルカ))となった。僕の名前がルカだからこそ知った言葉。 僕と彼女はこの星の新しいコモノート化する。生命の共通祖先と化すのだ。 遠方の森がざわめく。 あれはきっと前女王の森。 力強く立ち上がり、周りの働き蜂に相当する数々の命を包み込む形へと変容して行く。それは巨大なロケットとも隕石とも受け取れる形だ。 緑の木々が、濃すぎる酸素を作り上げていた意味を理解した。 僕等の移民船団が突入した際に、火災に因る消失を(こうむ)ってはいたが些細(ささい)な問題だったのだろう。彼女が見ている光景が僕に伝わって来る。外界の景色が脳裡(のうり)に浮かび、僕は老いた女王に仕える生き物が……主に植物が液体酸素を作り上げ、果実にも見える(ふく)らみへ溜め込んで行くのを見ていた。 宇宙へと旅立つ為、最初に必要な力。重力の(くびき)を振り切り、大気圏外へと飛び出す為の燃料を作り上げていたのだ。 赤方変移はずれていた訳じゃなかった。僕等がこの星を捕捉(ほそく)した時、この星の住人もまた僕等を見つけて旅立ちの準備を始めていたのだ。 なにせ、この星の生き物は精神感応(テレパシー)を使えるのだから。
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