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夢想にたゆたう僕の意識は蕩けて行く。
大気中の酸素濃度が減少するのを包まれた翼の内で感じ取る。呼吸が次第に落ち着く代わりに微睡みが僕を優しく深淵へ誘う。
今見えている世界は、夢か現か、彼女の意識か、僕のイメージか。
作り上げられた巨大な生命の揺り籠は、降り注ぐ星々を背景に宇宙へ向けて飛び立つ。
遥かなる旅路へ、小さな山の頂きなど軽々と越えて。
かつて知った知識を思い起こした。蜜蜂の巣別れは、古い女王が新しい女王に住み慣れた巣を渡して去る行為でもある。危険を冒す行為は残り少ない命を持つ先達が背負い、未熟な後輩が生き延び易い様に手を尽くす。
種の存続の為に出来上がっているシステム。そうする事こそが、より遺伝子を効率良く残して行けるから。
あの女王は次期女王に安全な地を明け渡し、新たな繁栄の場を求めて希望と危険に満ちた飛翔を行ったのだ。
僕達は、少女ゴルディロックスでしかない。勝手に誰かの生活圏に入り込んで、三つあるオートミールのお粥が熱過ぎるだの冷たいなどと理由を付け、丁度良い温度のものしか口にしなかった様に。寝床が広過ぎる、狭いと言って、自分の身丈に合ったベッドを選んで眠った様に。
自身の生きられる場所を求めて、生活できる場所に根を張る。
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