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先住者が居ようが居まいが、お構い無しだ。場所を得られなければ、生き延びる事はできないのだから。
僕は文明を手にした知性体の一つ。彼女等に文明は無かったのか、有ったのかの判断は簡単に下せない。けれど僕の全てを、精神感応に因って意識や知識さえ覗き見たのなら、新しく生まれる命は文明を発達させ、もっと安全に宇宙へと旅立つに違いない。
遥かな故郷を目指す旅とそれは同義だ。
新しいフロンティアを求めるのと同じだ。
命は優しくなくて優しい。優しさを思うのは心なのだから、どちらであっても変わらない。
皆、誰かを犠牲にして成り立ち、誰かの犠牲になる生態系。命の循環は、生産者を消費者が食べ、捕食者が消費者を食らう。死した捕食者は分解者に体を解かれ、生産者の養分と変わるのだ。そこにあるのは、ただ命を育む奇跡の繋がり。
六対の翼は変容し続け、全く別の器官と変わって僕と彼女を繋ぐ。
背後に立ち上がった森がさらに二人を包み込み、強固な守りの壁を作り上げて行く。
天空の遠い輝きは覆い隠され、暗闇が支配する中で淡い光が吐息に合わせて明滅し、甘美な感覚がそっと僕の意識を深い奈落へと突き落とした。
僕の全ては彼女に利用される。
人間の尊厳が失われる可能性を微かに危惧した。
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