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ゆっくりと親指が動き、眼尻を静かに拭って行く。
自分が泣いていたと気付いたのは、幾度か同じ仕草をされてからだった。
目の前の双眸は人の大きさを超えている。瞼の代わりに瞬膜が白眼の無い黒い瞳をぼんやりと隠しては現す。
君は、僕にとって異形だ。君にとって僕が異形で有る様に。
僕を受け入れ救おうとしてくれている貴女。
白い腕にはまばらに、衣服を着けていない体には胸から下を覆って浮かんでいる鱗。魚鱗とも蛇や蜥蜴とも違う独特の形状をした鱗は真珠の如き虹色の淡い輝きを纏っている。背に有る細かく鬣の様に別れた鰭は風のそよぎにしなやかに揺れて、人で言うなら臀部の尾てい骨辺りまで背骨に沿って緩やかな曲線を描き出していた。
真珠の鱗に光が弾けている。
尾を引き、束の間の輝きを煌めかせる、天を駆け行く光条を映して。
異邦の夜空を彩る、星屑達の大共演。
ここに来て、これ程の流星群を目にするとは思っても見なかった。
無数の星の流れには、僕の同胞の欠片も混じっているのだろう。
一足先に、美しく消え行く仲間が少しばかり羨ましく感じた。
幸運にもこの新たな台地に足を着けながら、僕には生き残る術はないのだから。
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