星辰航路

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大気の揺らぎか、瞳に溜まる涙の揺れか、淡く輪郭(りんかく)(にじ)ませる星々の輝き。 散りゆく最期を華々しい灼熱の光へと変えて、漆黒の中に束の間存在を刻み付けて消える星の欠片達。 綺麗だ、とてつもなく。 秘跡の現れだと理屈を無視し受け入れてしまう光の洪水。 全ての存在が輝かしいと思える異邦の景色。 孤独に宇宙の暗闇の中を旅して来た僕達。命を繋ぐ冷たい眠りの為に、小さな機械に閉じ込められて夢も見ない暗黒から解き放たれた意識の前には、残酷で鮮烈に刻み付けられる光景だった。 僕等の故郷だった星でも見られただろう事象。人工の明かりに白くけぶる夜空が今はどうなっているのか、既に数世紀以上過去の(へだ)たれた世界を想う。 遥かなる宇宙を旅し、人々の叡知(えいち)を注いで途方もない時間を掛けて辿り着いた新天地。 かつては遺伝子汚染になると、人工衛星一つ打ち上げるにも慎重だった僕達の先達が持っていた認識。地球外生命の存在に気を使い、新たなフロンティアに踏み込む時には慎重過ぎる程に、地球産の生命を運ぶ危険を危惧して排除に尽力したのに。 時の流れの前に、人の生存戦略と認識は少しずつ変容した。 系外惑星の姿が明らかになればなる程。
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